2009年12月11日星期五

大女優と近所付き合い 石坂浩二さんの絶品料理で歓待

ルリちゃん
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浅丘ルリ子さんは人気画家、中原淳一先生がその才能を見出し、映画「縁はるかに」のヒロイン役抜てきして以来、日活の看板として活躍してきた大女優である。私はかつて、中原先生の内弟子だったこともあり、ひそかに親近感を抱いていた。
トーク番組の衣装を担当したことからルリ子さんと知り合ったが、夫婦ぐるみの付き合いが始まったのは、実は「家」が縁だった。東京・青葉台の自宅を建設するため、私は2年ほどマンション暮らしをしたことがある。そのとき、同じマンションに住んでいたのが浅丘ルリ子・石坂浩二夫妻だった。
「あら、芦田先生じゃない。奇遇ねえ。一体、こんなところでどうしたの?」
「あれ、ルリちゃんか。実は今度、このマンションに引っ越してきたんだよ」
マンションの入り口で偶然、顔を合わせ、こんな挨拶を交わしたことから"近所付き合い"が始まった。
あるとき、京都からマツタケが送られてきたので、私はるり子さんの家に届けたことがある。妻が生地の買い付けで欧州に行っていて、私だけではとても食べきれなかったからだ。すると翌日、ルリ子さんが玄関先に現れた。
「先生。昨日はマツタケ頂いてどうもありがとう。これ、うちのへーちゃんが作ったのよ。すごく美味しいから食べてみてね」
涼しげな笑顔を浮かべながら、ルリ子さんはナプキンのかかったお盆を差し出した。中身はきれいに盛り付けされたマツタケのグラタンとマツタケご飯。ちなみに「へーちゃん」とはルリ子さんが石坂浩二(本名=武藤平吉)さんをよぶときの愛称。また、その料理のおいしかったこと。石坂さんの玄人は出しの料理にはいつも感激した。
家に招待されると、腕によりをかけた山海の珍味をご馳走してくれる。デザートにメレンゲが出てきたときにはただただ脱帽するばかり。フランス料理、日本料理、中華料理、イタリア料理・・・・・・。何でもこなした。台所には丁寧に研いだ柳包丁が何本も下がり、深底鍋など調理道具もたくさん並んでいた。まるでレストランの厨房のようだった。
よくマージャンにも誘われた。そんな時、ジャン卓を囲むのはもっぱらルリ子さん。石坂さんは夜食づくりの担当だった。「へーちゃん、そろそろおなかがすいちゃったわ」。真夜中、ルリ子さんが声をかけると、石坂さんがいそいそと台所に立つ。そして、鳥を丸1日煮込んで取ったという出汁で夜食のラーメンを作ってくれた。
そのおいしかったこと!絶品だった。「ルリちゃんは料理はしないの」と尋ねると「へーちゃんの方が上手だから任せているの」となんともあっさりした返事。そんな飾り気のない人柄に私は好感を抱いた。ルリ子さんは私のショーに駆けつけてくれる。私も彼女の芝居や映画を良く見る。お互いにズケズケと素直に批判し合える気の置けない間柄だ。
浅丘、石坂夫婦が別れてしまった時、私はルリ子さんを力づけようと思って「何か買ってあげようか」と尋ねた。「宝石がいいな」と言うので、「涙の滴」を模った小ぶりのダイヤのイヤリングを送った。時折、まだそれを身に着けてくれているようだ。笑いも涙も共に分かち合ってきた兄妹のような交流が今も続いている。


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単語

石坂浩二 いしさかこうじ
ヒロイン
抜擢 ばってき
親近感 しんきんかん
涼しげ すずしげ
ナプキン
武藤平吉 むとうへいきち
玄人 くろうと
研ぐ とぐ
飾り気のない人柄 かざりけ
滴 しずく
模る かたどる
分かち合う わかちあう

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